序ノ幕『再会』2
「でも…
一番充実してたのは市川さんと一緒に過ごしてた時だったよ」
これが本心。天達には悪いと思うがやっぱり彼が一番だった。
「クク…老い先短けぇじじいの人生全部くれてやったんだ。当たり前だろう…?」
自信満々に言い放つ彼に笑いが漏れた。ああ、変わらない。昔のままだ。
『そうだね』と相槌を売って赤木が笑えば市川は歯を覗かせて笑い、相手の柔らかな髪を撫でる。
「まあ…、くれてやった相手が想像通りの美人だったと分かった以上、後悔する必要はなさそうだな…」
「…え?」
驚き八割、照れ二割で目を見開いた。
聞き間違いでなければ……今の言葉はつまり…―
「見えてんだよ。今手前がアホ面でこっち見てるのも全部な…」
…このじじいはどれだけ俺を驚かせれば気が済むんだよ。さっき何気なくデレやがって…。そもそも最初の方で見えてるような雰囲気出してたじゃねぇか。あまりの嬉しさに気付かなかったっていうのは何て言うか色々アレだ。
顔が熱い。駄目だ。絶対赤い。見られたくなくて彼の胸板に顔を埋めた。…上からの笑い声。ああ、きっと気付いてるな…クソじじいめ。
俺が照れて赤くなってるのも全部見られた。…彼に見られるのは何だか擽ったい。
「なら、最初から見えてるって言えよ…。性格悪いな、じじい」
顔を服に押し付けながらだったから声が篭った。
「直ぐに教えてやってもつまらんだろう…」
「それが性格悪いっつってんだよ、馬鹿」
「照れ隠しに暴言を吐くのは変わらねぇみてぇだな」
自分の事を知られている気恥ずかしさに思わず唇を尖らせると『拗ねるな』と笑われて頭を小突かれる。少し痛い。
でも、その痛みに俺は今が夢ではないのだと確信した…―
‥…―続
───
あとがき
「黄泉の世界ならずっと一緒にいられるんじゃね?」
上記の考えからずっと書きたいと思っていたネタでした(´ω`)
神域改め13歳が甘えたい盛りとなりました。一言言うならいちゃこら市赤Love(←
2010.3.8
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