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Act.2『気紛れ』2


「お願い……何でもするから…」

むわ…と何かが漂った、気がした。思考に一瞬モヤが掛かる。

(何だ…今のは……)

「ねぇ…」

狐の声が頭に響く…。ああ、成る程…コイツのせいか……。
狐の片耳をつまみ引っ張る、ぴくりと少年の肩が揺れ、小さく苦痛の声が漏れた。

「お前…何か使ったな…?」

化狐は人を、生き物を惑わす。術の一つや二つ…使ったとしてもおかしくはない……。

「っ……気付かなきゃいいのに…!」
「手前が未熟だからだろ…まあ人間なら惑わされるかもしれんがな……」

ギリ─
歯を食いしばる音。それは悔しさに塗れていた。市川はふう、と小さく息を吐く。

「そんなに住みてぇか…」
「…ん」

こくりと頷く狐に狼は唇をへの字に曲げ目を細めた。

些細な気まぐれである。
出会った当初、彼に惹かれた故か…。最終的に『危険』だと認識し何か面倒事に巻き込まれる前に離れようとしていた。が、彼という存在は水の中に色を垂らしたように僅かな時間で儂の心を浅く広く…侵食したのだ。たがら憎たらしい筈であるこの狐に心を許している自分がいる。
隣で『有り得ない』と叫ぶ己がいたがあまりにも小さな声だった。それはやがてモヤに飲まれ消えた。

(どうしても引かぬのなら…)

受け入れるしかあるまい…。こう考えてしまった時点で既に手遅れかとも思われる。

「お前、家事は…?」
「一応、出来る…けど…」

突然の問いに目を見開いた狐はきょとんとする。
何が起こったのか分からないといった様子で途切れ途切れに言葉を返すとそれを聞いた市川はそっぽを向いた。そしてぼそりと呟いたのだ。
『なら、明日から洗濯は手前がやれ』と─
獣の狐がそれを聞き逃す訳もなく新たな驚きに再びきょとんとする。言葉を失っていた彼は数秒後、首を傾げ問うた。

「…住んでも、いいの?」

しかしその問いへの答えは返って来ず、市川は無言だった。狐は彼の背を見つめ『ねぇ』ともう一度、答を欲した。市川から返ってきた言葉は一つである。

「勝手にしろっつってんだ…。それ位悟れ…」

肯定を聞き、狐はまず安心を得た。そして後からふつふつと沸き起こる感情に顔を綻ばせる。

「…ありがと」

彼の礼の言葉のむず痒さに市川は顔をしかめ、赤木に背を向けて寝室へと足を運んでしまったのだった。



‥…―続


───
あとがき
同棲に成功したぜっ(゜∀゜)ひゃっふー
Glenはちゃんと小説の道筋を決めたのにそれ通りに書かない事が多々あります/(^O^)\
せっかく線路を敷いたのに脱線しまくりっていう…!見切り発車ばっちこいですよ!!私の座右の銘だ『見切り発車』!(黙

2010.2.2

 

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あきゅろす。
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