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酔いどれ。2
 

そんな彼の事を赤木は怪訝そうな顔をして見る。彼にしてみればいきなり正面にいた人間の行動がおかしくなったのだ。不思議がるのは当然の事である。

「平山…?」

赤木が声をかければ平山は慌てた。今だにやけたままの彼はバッと立ち上がり、座敷を降りる。

「ちょっと手洗い行ってくるっ…!」

赤木に喋らせる暇を与えずに平山は別の空間に逃げてしまった。去り際に『適当に注文しといてくれ』なんて言われてしまった赤木は初めぽかんとしていたが、ふぅ…と小さな溜息を吐きその瞳をメニューに落とした。



───



トイレの個室に篭り深い溜息を吐く。我を抑えられない自分が情けなかった。同性がネクタイを緩める姿を見てにやけてしまうなんて変態以外の何者でもない。
思わず、感情に任せて腿を叩く。打撲の微痛は全身にゆっくりと鈍く…広がっていった。これが戒めになればいい。なんて思いながら後数分、平山は個室に篭っていた。


大分落ち着いた平山は息を吐き、己を落ち着けてから彼が待つ席へと向かう。そして、先ずに謝罪を口にした。

「悪いな、注文任せちまって…」

頭を垂れて席に戻れば赤木は唇に笑みを縫い、先程の事を問い質すでもなく迎えてくれた。

「おかえり。取り敢えず熱燗…頼んどいたぜ」

彼は上着から煙草を取り出し、慣れた様子で火を点ける…その行動一つ一つを平山は魅力的に感じた。嗅ぎ慣れた彼の煙草の薫りさえもが愛しい。煙草が苦手な平山だが彼の煙草だけは特別である。不快感が全くないのだ。この事を考える度に彼はそれ程赤木の事が好きなのだと…実感させられていた。
二人でそれぞれに暇を潰していれば店員が『お待たせしました』とお盆を持ってくる。テーブルの上には徳利が一つに猪口が二つ、更にお通しの冷や奴が二つ並べられた。
平山が手を伸ばすより先に赤木の手が伸び、徳利は宙に浮く。それが傾いて二つの猪口に酒が注がれた。

「ほら、飲もうぜ」
「あ、ああ…」

手に取り喉へと流し込む。いつもは少しずつ飲んでいる平山なのだが、今日はつい、一気のみしてしまった。口に広がる生暖かい酒の味…。

「…良い飲みっぷりじゃない……」

何時もと違う飲み方をする平山に一瞬目を見開いた赤木だが、ふ、と薄く笑めば彼の猪口に酒を注ぐ。

 

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