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中毒。
 

「市川さんって好きな人とかいないの?」

市川は一瞬行動を忘れた。
今までそんな事聞きもしなかったのにいきなり何を言い出すんだ、このガキは…。

ぽかんとしていれば『ねぇ…』と不満そうに声を漏らされる。市川が視る暗闇の中、眉を寄せた赤木がこちらを見ていた。
老人はふぅ…と息を吐き本心を全て露にする。

「…儂に答える義務はないだろう?…なあ、赤木君」

さすれば、赤木は押し黙り、ふん、と鼻を鳴らした。

「…じゃあ、あの女中さんとはどんな仲?」

更なる問いに疲れが増す。女中との仲なんて聞かなくとも分かるだろうに…思わず再度の溜息を吐いた。

「…主人と手伝いだ。それ以外に何がある……」
「…夜の関係とか?」

くすり、笑い声が鼓膜を擽る。赤木から出た言葉に思わず市川も笑いを漏らした。
声を聞く限り若めなあの女中がこんな老いぼれを相手にする訳がないだろうに…。

「ククク…あんまりませた事言うもんじゃねぇぞ、赤木…」
「だってアンタなら手出しそうじゃない」
「そりゃあ、お前の間違いだろう?年中発情期の癖しやがって…」
 
徐に手を伸ばし、彼の髪をぐしゃりと乱す。すれば赤木は身体を強張らせる事なく市川の手へと頭を擦り付けた。手の平を擽る髪にふ…、と口角が上がる。

「盛ってんのはアンタもだよ。市川さん」
「どっかのエロガキが誘いやがるからな…」

市川が気分じゃないと言おうとも最終的には赤木の良いように事が進められている事が多い。無理矢理という訳でなく、彼の意思を上手い具合に誘導し巧妙に誘い込む。

何もかもが計算尽く…全くもって末恐ろしいガキだな…。
翌々考えれば、そろそろ床に伏してもいいような老人が中学生のガキに盛っているというのもけったいな話だ。おかしいのは自分も…、認識と同時に思わず溜息が出る。

「なら…その誘いに乗る市川さんはエロじじいだな」
「そう来るか……ったく、七面倒臭ぇガキだな」
「ふふ…その言葉そのまんま返すよ」

その言葉の後、市川の指にぬめりという感触。
生暖かい、これは……舌か。

「舐めるな、気持ちが悪い」
「うわー、傷付いたなぁ…今の……」
「嘘を吐くんじゃない、この小猿が」
「あ、ばれた…?」
「当たり前だ」

互いの笑い声が鼓膜を揺らす。市川が舐められて唾液に濡れた指を赤木の唇に押し付けるとその唇は弧を描き吊り上がった。

「何?キスでもしてくれるの…?」

普段なら『馬鹿を言うな』と貶し言葉を一つくれてやり押し離す市川だが、今日は何時もと違う反応が欲しい気分だった。
老いても男、優位に立ちたくなるのは本能だと思っている。

「ああ…そうだな……」

赤木の顔を両手で固定し顔を寄せた刹那『え?』と小さく声が聞こえたが気にはしない。そのまま彼の声を塞ぐ。
いきなりの事に驚いたのかびくりと身体が揺れ、強張る。何時もと違う、生娘のような反応。新鮮なその様子にとてつもなくそそられた。必然的に深くなった口付けを終え、赤木の唇を舐める。

「っは、ぁ…は………。やけに積極的だね…、興奮した…?」
「ふ…お前さんみたいな生意気なガキを平伏せるのも面白いかと思ってな…」
「クク……面白いじゃない…やってみせてよ」

絡み付く腕、脚。四肢が己を引き寄せるかのように纏わり付く。それに促されるようにもう一度口付ける。


口付けの最中、気付く。

ああ、儂はもう…─
この子鬼の甘さに毒されているのだと───



…─了

 
───
あとがき
ただイチャイチャさせたかっただけだっていう\(^O^)/出来てないけど

2009.12.5

 

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あきゅろす。
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