初めての秘密

人に言えない事なんて、誰しも一つや二つ、持っているだろう。
しかし、まさか。
本気で誰にも言えない事が出来るとは、晃は思ってもいなかった。



「いただきます」



嬉しそうな顔をして手を合わせれば、後は目の前に並べられた夕飯を豪快に掻き込むだけ。
それを晃の目の前に座る大輝がやると、世の女性の大半はそのギャップに引くだろうなと確信を持って思ってしまう。
まだここが家だからいいが、外では気を使えと余計な事を言いたくなるのは、この幼馴染みが若手俳優として今売れているからだろうか。
晃は溜め息を咀嚼した物と一緒に飲み込むと、代わりに「ヒロキ、ご飯粒」と指摘した。
食べ方の指導を昔からしているが、どうも直った節がない。食べ方も礼儀の一つだ。共演者やスタッフの印象が悪くなったらどうする気だと、言いたい事を胸の内に矯めて睨めば、当の本人は気にした様子もなく、
「ん。とって?」
顔を近付けてきた。
「…。」
ここが外の店や、互いの実家とかでなくて本当に良かった。
何故なら、思いっきり殴れるからだ。
「歯、食いしばれ」
「っへ?え、顔は…!」
「安心しろ。ボディーだ」
言うが早いか、襟首を掴み上げ無理矢理立たせた所に拳を叩き込む。
「っ」
息を詰めた大輝に、晃はまた何事もなかったように食事を始めた。
「あっ…愛がイタイ…」
テーブルに額を付けて呻く大輝に、何だか可哀相な気がしてきて、晃は箸を置くと、「ホラ顔上げろ」と声をかける。結局の所、こんな風に邪険にしたって折れるのは、昔から自分なのだ。
パッと輝かせ期待に満ちた顔を上げた大輝に、晃は口元についたご飯粒を取ると、近くにあったごみ箱に投げ捨てた。
瞬間、あ!と悲痛な声が上がる。見れば、酷く残念そうな顔をした大輝がいて、
「そこは食べるところじゃないの…ッ!?」
「どこのバカップルだ」
「俺達」
「あーはいはい」
「…最近アキラからの愛が感じられない」
どんより落ち込む大輝は、端から見ていてとても面白い。
昔から変わらない大輝の姿に、大型犬だな。と晃は思いながら、やっぱり自分は大輝に甘いなと、言葉をかけた。
「愛してなかったら、とっくにこの家から出てる」
「それでも…っ!」
「いってらっしゃいと、お帰りなさいを俺はヒロキに言いたい」
「……チューつきで」
付け足してきた大輝に苦笑して、チューつきで。と付け足す。すると大輝は満足したような顔をして、
「アイシテル」
素早く晃にキスをしてきた。
「…ったく」
油断も隙もないと呟く晃に大輝は小さく笑うと、また食事を再開する。それを見ながら、晃は幸せそうに微笑んだ。




言える筈もないし、言いたくもない。
同居人が芸能人で、恋人だなんて。
互いに、誰にも言えない。
それは、二人が共有する、

















初めての秘密


(そういや、週刊誌のカメラマン表に張ってたから、一応気をつけとけよ)
(アキラ何でそんなんわかるの…ッ!?)



【終】
幼馴染みとかとってつけたような感じになりました…すみませ…ッ!!
でも幼馴染みが芸能人とか美味しいなとか思いこうなりました
少しでも楽しく読んで頂けたらと思います



*master*鼓様
*HP*http://m-pe.tv/u/?60w06





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